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活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

中日新聞の記事にコメントしました


Category: 社会にお返し   Tags: ---
ご存じの方も多いと思いますが、5年後の2024年に、黒部峡谷鉄道の終点から黒四ダムまでのルートをエレベーターやバス、ケーブルカーを乗り継いで移動できる、通称『黒部ルート』が一般向け公開されることになっています。あのブラタモリで、タモリさんも通ったルートですね。今般、この黒部ルートの一般開放に伴う潜在的なリスクに関して、中日新聞の記者さんが記事をお書きになり、コメントを求められましたので、簡単にコメントを寄せさせていただきました。

[リンク →] 黒部ルート 観光開放へ トンネルで急病 大丈夫?

今までも、一般人がこのルート(水平歩道)を通ることは可能だったわけですが、ご覧の通り()命と引き換えに近いレベルの道のりでしたので、黒部から黒四ダムに来る人というのは事実上、脚と健康と体力に自信のある人だけ。私のようなインドア派三段腹人間は事実上、立山駅から信濃大町へ抜けるルートの一択でした。



黒部ルートは、途中やや迂回しているものの、基本的にこの水平歩道のルートをバスや鉄道を使って移動できるルートで、もともとは関西電力の関係者が施設の保守管理をするために使っている業務用ルートです。このルートが一般開放されれば、年間1万人とはいえ観光地化されている黒部・宇奈月温泉からの交通手段が確保されるわけですから、アルペンルートの人の流れは少なからず変わることになるでしょう。健脚も命を懸ける覚悟も水平歩道に比べたら遥かに要りませんので、おそらくこのルートを通る観光客は大なり小なりレジャー化し、アルペンルートを信濃―立山ルートと、黒部―立山ルートの二択にする効果をもたらすものと思います。

記事で申し上げたコメントは、以上の前提をもとに読んでいただけると何が言いたかったかを分かっていただけると思います。便利になれば、より軽い気持ちで上がってくる人を増やすことになるのは間違いありませんので、記者さんが関心を向けているような急病人の問題はもちろん、落盤事故の際にパニックを起こさないよう、ここが作業用の通路であり、過去に複数回落盤事故も起きているところだという「不都合な事実」もあらかじめ伝えておくのです。むしろそれを伝えることでこの穴を掘った先人の労苦や、維持管理の大変さを含めた解説を加え、そのリスクをもオーセンティシティ(真正性:もっともらしさ、有難み)を増す材料として観光資源の中に組み入れる工夫が必要ではないか、ということですね。

富山は、小学校の教科書にも出てくる知名度抜群の潜在的観光資源を擁しているのですが、それを生かそうとする様子はない=不都合な事実に目を向けることがどうも得意ではないようです。この記事をお書きになった山中さんには以前、イタイイタイ病をめぐる記憶の継承に関して取材を受けたことがありますが、事実上イタイイタイ病の記憶は、健康パークの脇に隔離された格好になっていますね。近ごろ流行りのダーク・ツーリズムの研究が示しているように人間はチェルノブイリ原発やアウシュヴィッツ収容所の跡地にも観光に行く生き物です。影の存在によって光の価値を知るように、ネガティヴで不都合な情報を伝えることで富山の価値が下がるわけではありません。不都合な事実を知り、それを公知することに憶病になってはいけないように思います。

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テーマ : 快適な生活のために    ジャンル : ライフ


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