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活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

イタイイタイ病と観光との関係について、記事にコメントしました。


Category: 社会にお返し   Tags: ---
昨年行われた人文知コレギウム、与えられたテーマが『富山、「病い」の未来を切り拓く』だったものですから、それに合わせて「ダークツーリズムの視角からみた観光地富山の可能性」と題した話題提供を致しました。今春には、口頭発表の概要をチャプター(書籍の1章)にもまとめさせていただいたのですが、これらに興味を持ってくださった北陸中日新聞の山中さんから、イタイイタイ病とダークツーリズムの関わりについて何度か取材を受けてきました。今般、それを反映した記事が載っていることを同僚の先生に教えていただいたので、遅ればせながらご紹介します。
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イ病公害病認定50年(上) 語る・巡る(中日新聞:5月4日付)
負の歴史 語り継ぐ観光を イ病 患者ら高齢化で模索(中日環境net:5月6日)
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理不尽にも罹災され、時には謂われのない差別にも見舞われたであろう当事者の方々にとって、こうした罹災体験は忌まわしく、振り返るのも嫌なものですし、ましてその傷跡を他者から触られることに大きな抵抗を感じるであろうことは誰しも容易に予想がつきます。ただ、どんなに鮮烈で暗い過去も、時間とともに風化し忘れ去られていくことは避けられません。記憶が歴史の一部として整理されていく過程で、捨象されリアリティを失っていくものも出てきます。こうした失われゆく記憶のアーカイビングに一役買うのがダークツーリズムです。

その性質上ダークツーリズムは、人の不幸を見世物にする不謹慎な物見遊山と捉えられがちです。ただ、これはホスト(迎える側)のみならずゲスト(観光する側)にも言えることで、彼らもホストの側と同様の「物見遊山ではないのか」という後ろめたさの中で観光をするのだということは理解しておく必要があるでしょう。その後ろめたさゆえにこそ、当事者や現場で繰り広げられるリアルなストーリーに謙虚に耳を傾ける姿勢が生まれるともいえます。だからこそダークツーリズムは、何をどう見たらよいのかを、語り手がきちんとストーリーとして紡いであげることが、受け取る側の姿勢にとても重要な意味をもつ観光だといえるでしょう。

語り部による生々しい罹災体験や視覚に訴えるモニュメントも重要ですが、それらを通じて得られる体験を受け手の側が咀嚼するのを助けるためには、周到に編まれたインタープリテーション(第三者視眼からみた解釈・翻訳)が極めて重要です。特にイタイイタイ病の場合は、象徴的なモニュメントの多くがすでに失われていますから、失われた(隠蔽された)記憶をどのようにして来訪者にありありと伝えるのかが決定的な意味を持つでしょう。

このことを示す重要な研究として、かつての収容所跡で行われているダークツーリズムを比較したStrange and Kempa(2003)の報告があります。それによると、劣悪な環境に抵抗して立ち上がった囚人たちの人間模様を丁寧に提示したロベン島では、観光客も物見遊山の態度を改め、囚人たちへの敬意を示すようになったというのです。当事者の語りに充分な共感を保ちつつ、どのようなターゲットにその素材をどう「見せる」のかをプロデュースする冷静なまなざしの重要性を、この研究は物語っているといえるでしょう。記事では当事者たちの話が多く出てきていましたが、イタイイタイ病の過去と現在に充分な理解をもち、その上に立って適切な取捨選択とインタープリテーションの構築ができるプロデューサーとストーリーテラーが加わること。それによって彼ら当事者の試みは遙かに実り多いものになるのではないかと感じました。

Strange, C. and Kempa, M. 2003. Shades of dark tourism. Annals of Tourism Research 30(2): 386-405

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テーマ : 生きる力    ジャンル : 学校・教育


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