活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

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2013年度の文献講読(9回目)


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人文地理学教室では、例年後期に2つの文献講読の授業を実施しています。
今年は月曜日に、この2つの文献講読の授業が行われています。
3時のおやつをみんなで飲み食いして、随時糖分を補給しつつ、
目の前の論文で吸収した糖をすぐさま消費。とても代謝効率の良い授業ですw
備忘録も兼ね、授業内容を簡単に残しておくことにしています。
来年度の受講生は、これまでここに紹介されていない論文を紹介してください!

第9回は、和文講読はHさんが、英文講読はM君とH君が、
それぞれ以下の文献を選び、内容を紹介してくれました。
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Mansour, S., Martin, D. and Wright, J. 2012. Problems of spatial linkage of a
    geo-referenced Demographic and Health Survey (DHS) dataset to a
    population census: A case study of Egypt
. Computers, Environment and
    Urban Systems
36: 350–358.

須山 聡 2003. 富山県井波町瑞泉寺門前町における景観の再構成. 地理学評論76(13):
    957-978.


須山論文は、井波の瑞泉寺門前に近年集積が進んでいる彫刻家たちの工房をとりあげ、ゴフマンの劇場論を借りた説明図式を援用しつつ、井波の景観変容を説明しようとしています。飛騨高地から五箇山を越えて砺波平野へ入る玄関口にあたる地勢から、この界隈は交易の拠点として商業機能が集積、瑞泉寺の門前にはずらりと伝統的な商家が軒を連ねました。しかし、ご多分に漏れずモータリゼーション以降は交通の結節点ではなくなってしまい、交易でご飯を食べていた人たちは町を去って、町はみるみる歯抜けになっていきました(良くある話です)。

こうなった後で、観光地化を志向して町の再生を図る例は全国に腐るほどあります。群馬県にあるたくみの里もそうでしたし、八尾もそうでしょう。或いは私がフィールドにしてきた鞆の浦も今後、それを目指そうとしている町といえるのかも知れません。今や一世風靡している「観光まちづくり」は、まさにこれに乗っかった当時代的な現象なわけですが、この井波が特殊だったのは、なぜかその歯抜けになった町屋に、周辺から続々と「井波彫刻の彫り師」が移り住んできてアトリエを構え、彫刻家の住む門前町景観が出来上がってしまったことです。車で数十分の、受講生に比較的馴染み深いテーマだったこともあって、活発な議論が交わされました。

本来は商家であって職人の工房ではないはずの家に彫刻家が居を構える、不自然な(=つまりは真正:オーセンティックではない)パッチワークの景観であるにもかかわらず、それが観光客には「伝統的っぽい街並み」として、違和感なく消費されている。論文ではここに注目し、それをボブスボウム&レンジャーのいう「創られた伝統」として解釈しています。論旨は非常に明確で、おはなしを読んでいるように流れが良く、学生的には非常にウケの良い論文となりました。

しかし、そうした景観がなぜ、他のどこでもないこの門前町に「再構成」されたのかという、最も基本的(根本的)な疑問をひとたび読み手が持ってしまうと、その回答がこの論文からはほとんど読みとれないことが明らかになってきます。

ひょっとすると、著者の関心ではなかったのかも知れません。しかし、著者は概要にも「門前町の景観は、異なる景観形成主体によって演出された舞台の二重構造によって形成された」と、景観が別の意味を伴って再構成されていくプロセスやメカニズムの解明をこの研究の成果としています。そして、高度成長期の終わり頃から始まった自治体の助成事業(しもたや解放事業)や、町と観光協会からの要請を受けた町内会による自主的な修景事業が、いわゆる街並み保全による景観形成に重要なファクターとなった・・というストーリーを描き、瑞泉寺に最も近い八日町をとりあげてインタビューや資料分析からこれを裏づけることで、論陣を張っています。

八日町は確かにアトリエ形式の彫刻家が(空いた町屋を居抜きする格好で)多く移り住んでいはするのですが、良く読むと、その隣にある上新町には、さらに多くのアトリエがあることが分かります(図5)。図3によると、彼らの多くはまちなみ補助事業が始まるよりも前の「戦後から1970年代半ばまでに」(p.964)すでに移り住んでいたことが明らかにされます。しかし、この研究ではなぜか、彼ら上新町の人々が、八日町の景観形成や自治体の補助事業創設にあたって果たした役割や、高度成長期以降に入ってくる「新参者の職人」に対する、彼らのスタンスについては、ほとんど分析していませんでした。

彫刻職人は「取引も主に縁故」に頼り、「親戚や友人などの個人的なネットワーク」を介した営業で充分やっていけるとされています。さらにはそのアトリエを観光客に見せたところで、観光客からの受注は「1年に1・2回」にとどまるのだそうです。にもかかわらず、なぜ彼らは井波の門前町を目指して集積するのでしょうか。助成事業が得られるよりも前からその動きがあったとすれば、いつから何故そういう現象が起きたのでしょうか。その生成のメカニズムは、ほとんどこの論文では語られませんでした。学生たちのコメントも、ほとんどがこの点に集中していました。つまりは結果としてあらわれた景観を分析してはいるものの、その形成のメカニズムやプロセスは、学生にはもうひとつよく見えなかったようでした。

一方、Mansour et al.の論文、ですが・・・
これは恐らく、今年度読んだ論文の中でもぶっちぎりの難読論文。選んだ学生も含め、誰一人意味が良く分からず、非常に授業運営に困る(笑)内容でした。ざっくりと言えば、この論文はエジプトにおいて、日本でいう国勢調査のようなセンサスデータと、それとは別に集められた保健調査(出生率、乳児死亡率など)のデータを地理情報システム上で解析可能にするための「空間的リンク付け(Spatial linkage)」をしようとしています。

しかし、その内容を理解するにはいくつものハードルがあり、(1)そもそもの前提として、エジプトの電子統計データの整備状況を、この論文じゅうに散りばめられた断片的な記述を拾い集めて再構成できる、(2)集計地区単位がセンサスと保健統計では異なり、保険統計の場合は、いくつかの世帯をひとまとまりにしてGPS座標を与え紐づけするGPSクラスターという、かなり風変わりな方法でデータが構築されていることが読みとれる、(3)それらポイントデータを、センサスのように地区単位(ポリゴン)で取られているデータ上で分析するには、先に読んだGutiérrezらの回でも出てきたような、点座標をポリゴン上で分析するための手続きが必要だと理解できる、(4)点分布には当然、分布の偏りがあるので、それがどのような偏りか(ランダムなのか、凝集しているのか、離散型なのか)をチェックしてからポリゴンとのリンク付をしなければならないことが理解できる、ことが必要で、特に最後のやつは私も一度も使ったことのない空間的自己相関、モラン統計量、などの知識が必要という、極めて読み手を選ぶ論文。

私も上記くらいまでは理解できたものの、細かい解析手続きの全ては分からず、呪文をみながらみんなでドン引きして終わるという、何とも締まらない幕切れとなってしまいました。まあ何でもいいよと言った手前、こういうのが混ざってくるのはしょうがないですね。研究者だって何でも知ってるわけじゃありません(開き直り)。


//////////

-イブにこんな記事を配信する讀賣は鬼だな。
-いやまてよ、君は独りじゃないという逆説的なメッセージかも知れない
-それにしたって記事を書いたり調査をした連中はリア充なんだろ。同じ事じゃねえか

・・見た刹那こんな妄想を巡らしつつ、お陰で今朝クリスマスに気づく。
  ますます去る者日々に疎くなってきたのを痛感させられた。

「レストラン予約サイトが20~30歳代の男女約1800人を対象にした「クリスマスディナー」に関する調査では、男性70%、女性58%が「付き合っている人がいない」と回答。男女平均で、64・5%がイブに恋人がいないとみられるという」(讀賣ONLINE 2013.12.24)

皆さま好いお年を。
また新年も、よろしくお願い申し上げます。

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テーマ : ゼミ    ジャンル : 学校・教育

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