活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

経路探索の異文化比較に関する論文が掲載されました


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
2005年に、カリフォルニア大学に客員研究員として半年ほど滞在していた際に実施した
経路探索実験。結果をまとめた論文がこのほど、地理学評論の英文誌に掲載されました
のでお知らせします。

Suzuki, K. 2013. A cross-cultural comparison of human
wayfinding behavior using maps and written directions
.
Geographical Review of Japan Ser. B 85(2): 74-83.


博士課程に進学して以来、足かけ8年間「地理情報伝達の異文化比較」をテーマにした
研究をしてきました。
思い返しますと、2000年に人文地理にご掲載いただいた、地図化能力の文化的差異に
関する文献研究から、私の研究者人生は始まったのでした。これに続いて、日米の観光
案内書に含まれる地理情報の内容分析(情報の送り手側の分析)を経て、今回は情報を
受け取る側の文化的差異を、ひとまず確かめることができたことになります。

もちろん、この実験結果は1つのケーススタディに過ぎませんが、これで情報の送り手側と
受け手側の両方の文化的差異を、実験的に証明した格好になりました。ようやく、大学院
時代の自分にひとつの区切りがつけられたかなと思います・・。

奇しくも、送り手側の分析をした論文が掲載されたのは2003年で、今から10年前でした。
今回の論文と同じ地理学評論の英文誌。10年前、博士論文をこれから書く、暗中模索の
時期だったなあと今さらながらに思い出したりして。改めてあの頃の、初々しい気持ちに
戻ることができました。

この論文は、お世話になっていたカリフォルニア大学サンタバーバラ校で実験をおこない
ましたが、いざ実験をやる段になって、アメリカが調査倫理にものすごくシビアな国である
ことを知り、大変苦労したことを覚えています。

本来、経路探索実験を行う場合、被験者が予め有している知識の影響を排除するため、
未知の環境下で実施するのがベストです。しかし、なぜか米国の行動地理学の論文は、
大半が被験者が通い慣れているはずのキャンパス構内で実施されていました。

なんでだろう?と思っていたのですが、この調査を企画した際に、私を受け入れてくれた
Reg.Golledge先生から「絶対無理、許可降りない」と言われ、初めてアメリカの大学が、
学内に「調査審査部門(Office of Research)」を設けていること、凡そ人が絡む学問は、
須く(人文科学すら)調査企画書を提出し、内容の審査を受けてからでないと調査ができ
ないこと、被験者には調査前に個別のインフォームド・コンセントの時間を取り、同意書を
もらわなければならないこと、調査者にも、運転免許試験のような資格審査があることを
知り、大変驚愕したものでした(結局これを突破するのに、2ヶ月以上を要しましたっけ・・)。

その結果、調査は大学生を対象にした構内で完結する実験に変更を余儀なくされてしまい、
既有知識の影響を排除できなくなったことで、これをどう克服したものか、当時あれこれと
知恵を絞ったことを覚えています。

その苦肉の策が、「評価」を指標にした経路探索実験でした。
行動地理学は、その名称が端的に示す通り、「行動」という、はっきり成績の出る指標を
用いて人の空間認知の実相を明らかにしようとする学問です。しかし、そもそも何で行動
でなきゃいけないんでしょうか?むろん、行動で示せるならそれが一番良いのでしょうが、
実際問題、それができないから経路探索の異文化比較研究は、世界的にも全然進んで
いないのですね。アメリカの調査倫理規定があのように厳しい状況であることを考えると、
行動以外の手掛かりを使って実験を遂行した同論文は、1つの提案として意味があるの
ではないかと思っています。

私を受け入れてくれ、調査をご支援いただき、多くのご助言をくださったGolledge先生は
今はもうおられません。先生がお亡くなりになったことが、この論文を英文で世に問おうと
考える大きな動機になりました。この場をお借りし、先生からいただいた多大なご学恩に
改めて感謝を申し上げます。

You don't have to have sight to have vision.
後年に視力をほぼ失いながらも、行動地理学の権威として、むしろそこから大きな仕事を
残された、Golledge先生の座右の銘でした。先生は、極東のいち院生が書いた論文を、
英語圏で誰よりも早くその視野に収め、評価してくださった人物でした。
拙い内容ではありますが、本論文を先生に捧げ、心より尊敬と感謝の念を表明致します。
有り難うございました。

スポンサーサイト

テーマ : 心、意識、魂、生命、人間の可能性    ジャンル : 心と身体

05 2013
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

04

06


 
プロフィール

dr.suzuki

Author:dr.suzuki
鈴木晃志郎の活動報告をするためのブログです。
めいんのサイトへお越しいただける奇特な貴方は
→こちらをクリックしてください。

 
 
検索フォーム
 
 
 
最新トラックバック
 
 
 
QRコード
QR
 
 
ブロとも申請フォーム
 

Archive   RSS   Login