活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

スポンサーサイト


Category: スポンサー広告   Tags: ---
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2012年度の文献講読(9回目)


Category: 文献講読   Tags: ---
人文地理学教室では、例年後期に2つの文献講読の授業を実施しています。
今年は月曜日に、この2つの文献講読の授業が行われています。
3時のおやつを飲み食いして随時糖分を補給しつつ、
目の前の論文で吸収した糖をすぐさま消費。とても代謝効率の良い授業ですw
備忘録も兼ね、今年からは授業内容を簡単に残しておくことにしました。
来年度の受講生は、今年ここに紹介されていない論文を紹介してください!

第九回は、和文講読はSさんとT君が、英文講読はYさんとS君が、
それぞれ以下の文献を選び、内容を紹介してくれました。

吉田和義 2008. 子どもの遊び行動と知覚環境の発達プロセス. 地理学
    評論81(8): 671-688.
Cohen, P., Potchter, O. and Matzarakis, A. 2013. Human thermal
    perception of Coastal Mediterranean outdoor urban environ-
    ments
. Applied Geography 37: 1-10.


吉田論文は、東京都稲城市のニュータウンを事例に、子どもの知覚環境の
拡がりやその特性を調査したものです。伝統的に地理教育が強い日本では
子どもの知覚環境の拡大傾向やその要因を探る研究には一定のマーケット
が存在しており、研究も豊富でして、お隣の大西さんはその道の権威。私が
ブログでコメントをするのも憚られるのですが・・(^_^;)
可愛い学生が選んだからには書きましょう、仕方ありませんw

同じ著者の先週の論文も、若干そういう傾向があったのですが、本論文も
学生の目線からは気になる点が多かったようで、なかなか活発な議論が
たたかわされました。なかでも鋭い指摘だと感心したのは、表2の解釈を
めぐるものです。著者は子どもの遊び行動をいくつかに分類し、それぞれ
学年別に実施した子どもの割合を集計したデータが示されているのですが
ここで、「自転車乗り」の実施割合が小学校3年で23.9%だったものが
6年次には8.8%にまで減少したり、「買い物に行く」で、4年、5年で一旦
減少しながら6年でまた増加することなど、独特の傾向が現れています。

論文では理由がほとんど示されていないのですが、そもそも高学年の
児童が自転車乗りを遊びと認識するだろうか?あるいは相手次第では、
買い物は遊びにもお遣い(家事手伝い)にもなり得るのではないかと
いった指摘がなされました。どちらも遊び行動全体の中に占める割合は
決して低くありません。これを遊び行動に関するものだと、著者はいかに
して子どもたちに分からせたのか、論文からは判断できませんでした。
つまりは、具体的な教示(instruction)が不明なため、出てきた結果が
何を示しているのかも見えにくくなっています。

教示の疑問は他にも指摘されました。手描き地図描図課題で与えられた
「あなたの住んでいるまわりの様子について地図に描いてください」という
教示も「まわり」の指示対象が解釈によってかなり割れそうです。
もしかすると著者は、知覚環境そのものではなく、成長に伴う「まわり」と
いう用語の解釈変化を捉えてしまったかも知れません。

同様に近隣の写真を撮影する課題でも、「あなたの済んでいる町のすきな
ところやきらいなところなど町の様子を..」撮影してね、という教示を与えて
います。得られた結果が子どもの知覚環境全体ではなく、好き嫌いを投影
した環境である可能性が高いといえます。

このほかにも、手描き地図中の地物を学年ごとに集計した表6に中学生の
データが記されているのですが、その学生の記した学校が対象地の子ども
が通うのとは異なる学校であること(つまり中学生を対象に含めたことで、
違う小学校区=異なる集団)を同じサンプルの中に含めている可能性を
指摘する声や、学年ごとの変化のプロセスを見ることが研究目的なのに
写真撮影法は小学校の4年生以上をサンプルから除外していることなど、
テクニカルな部分でも疑問が多く提示されました。半年間の間に、みな
いいコメントをするようになりましたね。うんうん。

一方、Cohen et al.(2013) は、選んだ本人もなんでこれを選んだのか
分からないとのたまう困った状況。地理学とはかなり距離のある内容で、
ほとんどその解題にならざるを得ませんでした。

私の理解が間違っていなければ、どうやら地理学?というより生理学の
中に、人がある環境下で感じる体感温度をできるだけ正確に知るための
指標群を作成している研究領域があるようで、この論文は、テルアビブ
を事例に、ある場所で人が感じる実際の体感温度と、前述した計算上の
推計値との間の誤差を検討していました。体感温度はその場をたまたま
通った人を被験者にし、9段階評価で「いま暑い~寒い」を評価させる
方法でデータを取ります。その際、周囲の気温、湿度、風速なども計測
します。これを被覆率の違う市内三地点で実施し、被験者から得られた
実測値と、観測データをもとにPETと呼ばれるアルゴリズムで推計した
理論上の推計値との差を分散分析しています。

世の中にはいろいろな研究があるものだと感心しつつ、この研究に何の
意味があるのかを、今回初めて読んだ私が解説するという、かなり間の
抜けた絵づら。「これを研究しPETを精緻化したら、観測データだけで
微気候が人にとって快適かどうか(熱射病で死にそうじゃないか)を
算定でき、都市計画や緑地計画立てるときに使えるじゃろ?」...などと
口走ったんですけど、ご専門の方、間違ってないですよね?(-_-;)

ちなみにこの論文で出てきた唯一の疑義は、9段階評価を聞いた
被験者のサンプル数が明示されていないことと、3地点の被覆率が、
なぜか1箇所だけ書かれていないことでした(笑)。いや、鋭いと
思うよ?本筋にはほとんど関係ないけど。

これで年内はおしまい。みんな好いお年をね!
でも年明け早々また講読あるんだから、
年忘れはしても、読むのは忘れるんじゃないぞ~!

スポンサーサイト

テーマ : いじめ    ジャンル : 学校・教育

12 2012
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

11

01


 
プロフィール

dr.suzuki

Author:dr.suzuki
鈴木晃志郎の活動報告をするためのブログです。
めいんのサイトへお越しいただける奇特な貴方は
→こちらをクリックしてください。

 
 
検索フォーム
 
 
 
最新トラックバック
 
 
 
QRコード
QR
 
 
ブロとも申請フォーム
 

Archive   RSS   Login

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。