活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

2012年度の文献講読(6回目)


Category: 文献講読   Tags: ---
人文地理学教室では、例年後期に2つの文献講読の授業を実施しています。
今年は月曜日に、この2つの文献講読の授業が行われています。
3時のおやつを飲み食いして随時糖分を補給しつつ、
目の前の論文で吸収した糖をすぐさま消費。とても代謝効率の良い授業ですw
備忘録も兼ね、今年からは授業内容を簡単に残しておくことにしました。
来年度の受講生は、今年ここに紹介されていない論文を紹介してください!

第六回は、和文講読はSさんが、英文講読でNさんが、
それぞれ以下の文献を選び、内容を紹介してくれました。

Ostermann, F.O. 2010. Digital representation of park use
   and visual analysis of visitor activities
. Computers,
   Environment and Urban Systems
34(6): 452-464.

本間昭信 2002. 視覚障害者の移動環境評価とモビリティ規定要因.
   地理学評論75(14): pp.887-900.


本間論文は京都市を事例に、(1)視覚障害者の日常的な移動環境に対する
満足度を「移動環境」「公共交通機関利用」「移動計画」の3領域28項目に
渡って聞き取り調査し、これを因子分析することで、満足度がどんな要因
から構成されるのかを分析するとともに、(2)因子得点の類似度に基づき
対象者をクラスター分析で分類して、傾向分析を行ったものです。

分析手順が細密であったこともあり、学生には敷居が高かったようですが
図1で対象者が何区から施設に通っているかが図示されながら、その後の
分析で触れられていなかったり、クラスター分析結果を説明している894
ページで「すべての項目に対して消極的評価」とされる第4クラスターが
表3をみると「異動情報提供・利用」と「異動遂行」の2項目では正の値を
示していたりといった、微妙に良く分からない点があったことが、学生に
さらなる混乱を招いたようでした。

個人的には、クラスター分析はふだん全く使わない手法だったため、へえ
こういう風に使うんですかと分かったという意味で勉強になる論文だった
のですが、学生は他にも「(モビリティの高さと満足度評価の積極性は)
個人の障害の度合いや障害の履歴に基づいて関係し合っている」(896頁)、
「同じ視覚障害という属性をもった個人でも、障害の度合いや個人の
おかれた環境によって異動環境に対する意識も異なる」(同)とまとめる
くだりで出てくる「個人の障害の度合いやおかれた環境」についても、
これは図1のことも含むはずじゃないのか、とか、障害の程度や病歴などの
分析結果はどこだとか、結構細かい指摘が出てきました。クリティカルに
論文を読むクセが付いてきたという意味では、良い傾向なんでしょう。
いや、そう思うことにしよう・・。

Ostermann論文は、チューリヒの3つの都市公園で利用者の行動調査を
実施し、それをもとに、GISを援用した最適な可視化技法を提案しようと
しています。先週の反省を踏まえ、模範的なまでの「狭義の科学論文」が
選ばれたわけですが、公園利用者の行動パターンを記録すれば、普通なら
その結果をもとに「公園は任意の年齢・性別層にはこう利用されてました」
と来るところ、この論文はそこから先が曲者。
「解析結果はどうでも良いのだ。やりたかったのは、公園設計管理運営者に
とって有用な利用パターン図にするには、結果をどのような図法で表現する
のが最も良いかの分析」だったんだ、と主張していますw

経験豊かな研究者の皆さんならここで、本論文のある種“力業”ともいえる
強引な展開の理由をすぐさま推察でき、453頁の "Since the research
objective was to collect representative information on park use,
three parks in Zurich were observed over the course of three
summer seasons.. " で始まる段落にまで辿りついたところで、たちまち
この論文の背景を諒解されると思いますが、学生にはそんな芸当、まだ
できません。タテマエとしての研究目的もそのまま飲み込み、公園利用
のパターン調査を行動地理学的な視点でやろうとしている研究と思って
読むことになります。畢竟、分析結果について何の考察もないままただ
地図の描き方ばかりを試行錯誤している本論文の論旨を前に、おおいに
目を白黒させられることになったようでした。結局この論文も、先週までの
Political Geographyとはまた違った意味の難物だったというオチですw 
いやあ、論文を選ぶのって難しいですね。

来週は、実習2の成果報告を兼ねて、2年生が立山町主催の
インターカレッジ・コンペティションに参加。授業はお休みです。
広報誌みたら、けっこう本格的じゃないか・・(@_@;)
大西先生に恥を掻かさない程度には、頑張るんだぞ~・・!

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テーマ : いじめ    ジャンル : 学校・教育

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