活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

事業撤回:住民説明会の朝に


Category: 鞆の浦関連   Tags: ---
本夕、架橋事業の方針を撤回した県は、地元住民向けの説明会を開催します。
住民協議会の報告を受けての現職知事の重大な決断が、当事者たちに示されます。
ひとつの節目となることは間違いありません。

               ------- 引  用 --------
 鞆港埋め立て・架橋問題:計画撤回、県が住民説明会 福山で9日 /広島
                            (毎日新聞 7月2日(月)13時41分配信)
  福山市の鞆の浦の埋め立て架橋計画を撤回した県は、山側トンネルなどの代替
 計画についての住民説明会を9日午後7時から同市鞆町の市立鞆小学校体育館
 で開催する。湯崎英彦知事も出席する予定。
  住民説明会では、県が架橋計画を撤回した経緯や、山側トンネルのほかに、駐車
 場、港湾、護岸整備などを盛り込んだ代替計画について説明する。質疑応答の時間
 も設けるという。【寺岡俊】
      {出典:headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120702-00000213-mailo-l34}
               -------引用ここまで------

前のエントリーに書きましたように、この問題は時事問題であり、今後の政局次第で予断を
許しませんが、このまま進めば、遠からず架橋事業は凍結されることになっていくでしょう。
今朝は、この問題に多少ならず関わってきた者として、この先予想される鞆のまちづくりの
方向性について、ここで私なりに一定の見解を記しておこうと思います。

架橋計画当初になされた行政からの説得を信じ、そのまま30年間「道路が掛かると生活が
便利になり、子や孫も帰ってきて、鞆の町に活気が戻る」という夢にこだわりをもち続けて
いる方々と、調査の際に何人もお会いしました。彼らが抱く想いというのは、橋そのものと
いうよりも、橋に象徴されたある種の『神話(=橋さえ架かれば、先祖伝来の住処である
鞆の浦に明るい未来が開ける)』への希望だったのだと思います。



上の図は、鞆で配られている観光地図の描画範囲を抽出し、実際の地図に重ね合わせた
ものです。ご覧のとおり、平地区や原地区のほとんどが、どの観光マップからも捨象されて
いることが分かります。この地区の人々は、今のところ大半が観光業には従事しておらず、
観光で鞆の未来を切り開こうというビジョンも共有していない人々です。

事業を撤回し、観光で鞆の未来を模索する選択をするならば、今後はその夢を、観光資源の
近くに居住していたり、店を構えていたりする一部住民だけではなく、鞆の住民の大多数が
参加し一緒に追求するというスタンスをとれるよう、仕組みを工夫することが、大変重要に
なっていくことでしょう。

私たちは2008年10月、鞆の浦で住民意識調査を実施しました。この調査からは、架橋への
態度とは全く別個に、鞆の浦在住の方々の自分たちの住む地域への愛着が、きわめて強い
という結果が得られました。このことは、とても希望の持てるポイントです。

・「鞆町に住み続けたい」と答えた住民は全体の約79%
・「鞆町のためになることをして役に立ちたい」と答えた住民は約79%
・「住民は助け合い、お世話し合っていると思う」と回答した人は約82%にのぼりました。

立場の違いを超え、住民の多くが鞆への愛着とモラール(地域のために役に立ちたいという
意欲)を共有している。このことは、今後の鞆の浦にとり大きな社会的資源となるでしょう。

鞆の浦のように観光産業で生計を立てている人が少ないところに、既往の観光まちづくりの
イデオロギーをそのまま適用しようとしても、今後も同様の軋轢が生じるのは自明でしょう。
我々の調査でも、中心的な観光施設から最も遠い平地区でヒヤリングをした際には「これと
いった観光資源も無い自分達の地区は損ばかりしている」、「先祖伝来の土地を道路用地
として差し出したのだ、橋は悲願だ」といった声を多く聞きました。

こういった地区の住民も参加したくなるようなまちづくりの仕掛けはどうすれば可能なのか、
住民の目線に立って考えてゆく必要があると思います。

どのような方法でこれを進めるにせよ重要なのは、日ごろ外部に居住している我々来訪者は、
当事者の声を謙虚かつ丁寧に聞き、その声を尊重しながらまちづくりを進めるという点です。
鞆の浦の場合はこれが欠けていたところに、問題が複雑化する要因のひとつがあったことは
ご承知の通りです。

もちろん、外部の人にしか見えないものも沢山あります。住民の想いを充分汲み取った上で、
住民とは異なる視点を提供し、建設的な対話を進めることが、地域の人々に受け入れられる
今後の「観光まちづくり」の要諦ではないでしょうか。

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鞆の浦:県が架橋事業の撤回を表明


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鞆の浦の港湾架橋を巡る問題で、大きな動きがありましたのでご紹介します。

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鞆の浦:埋め立て撤回…広島知事、福山市長に伝達へ
毎日新聞 2012年06月22日 02時32分(最終更新 06月22日 10時01分)

瀬戸内海国立公園の景勝地・鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て・架橋計画を巡り、同県が計画を撤回する方針を固めたことが関係者への取材で分かった。湯崎英彦知事は25日、羽田皓(あきら)・福山市長と会談し、方針を伝える。原告住民の景観利益(景観を享受する権利)を認め、着工前の工事差し止めを初めて命じる広島地裁判決を受けて県が検討してきた。判決から2年8カ月を経て歴史的景観が残される方向になった。【寺岡俊、稲生陽、豊田将志】

埋め立て工事は知事の免許が必要で、知事はその前に国土交通相の認可を得なければならないが、県は、国に提出していた事業認可申請を取り下げる方針。1審判決を不服として控訴し、広島高裁で係争中の控訴審についても取り下げる見通し。更に架橋に代わる措置として、鞆地区の後背にある山側にトンネルを建設する案を軸に、地元と協議を進める。

埋め立て・架橋計画を巡っては、反対する住民が埋め立て免許の差し止めを求めた訴訟で、広島地裁が09年10月、鞆の浦の景観は「国民の財産」で、県側の裁量権逸脱を理由に免許の差し止めを命じた。

鞆の浦(mainichi新聞撮影)

湾を横断する架橋計画が問題となっている鞆の浦
=広島県福山市で2012年4月24日、本社ヘリから宮間俊樹撮影
{URL:http://mainichi.jp/select/news/20120622k0000m040120000c.html}

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前回の知事選から3年、そろそろ来年の知事選に向かって物事が動き始める頃です。
2009年は、衆議院選挙で民主党が歴史的な大勝を遂げ、政権交代が実現した年でした。
あれから3年、現在は民主党に強い逆風が吹いています。
湯崎知事は無所属ですが、支持母体は連合広島でしたので、民主党系です。
前回は藤田雄山氏が選挙前に引退し、自・公・社民は自主投票でした。

次の選挙まで一年と少し。この決断もひとつの争点になっていくことは間違いありません。
広島県民全体にとって、これがどれほど大きな論点になるのかは計りかねますが、
鞆の未来にとって、次の知事選は大きな意味を持つことになるでしょう。


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住民協議会の報告書が提出されました


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鞆の浦の住民協議会で2年弱に渡りメディエーターを務められた
牛島・大澤の両先生が、知事のもとへ報告書を届けられました。
これで、名実ともに住民協議会は終了しました。

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 福山市鞆町の埋め立て・架橋計画をめぐり、1月29日に終了した鞆地区地域振興住民協議会の進行役を務めた弁護士2人が7日、広島県庁に湯崎英彦知事を訪ね、報告書を提出した。参加した推進、反対両派の住民の共通認識として8項目を挙げ、計画の是非には触れなかった。
 牛島信弁護士(第二東京弁護士会)と大沢恒夫弁護士(静岡県弁護士会)。報告書を受け取った湯崎知事は「最も難しい過程を担ってもらった。しっかり受け止めて次のステップに進みたい」と述べた。
 報告書はA4判58ページ。1年8カ月にわたる議論で得られた両派の共通認識は、(鞆町中心部の交通混雑を解消する)バイパス道路の必要性への理解が一定に進んだ▽駐車場確保や下水道整備は必要▽景観への配慮も必要―など8項目とした。
 県が「技術的に比較する材料」として示したバイパス道路の工法5案も資料として添えた。(1)架橋(2)海底トンネル(3)山側トンネル3案―の時間短縮の効果や景観への影響を比較する内容としている。
 一方、計画の是非については「合意できれば理想だが、合意しなければならないとして始めたものではない。話し合いは十分でき、一定の到達点に達した」と総括した。
 湯崎知事は報告書を踏まえ、福山市と協議してできるだけ早く計画の是非を判断する意向を示している。

報告会
【写真】湯崎知事(右)に報告書を手渡す牛島弁護士(中)と大沢弁護士
【出典】:中国新聞(http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201202080017.html)
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2008年、初めて執筆した港湾架橋問題に関する論文のなかで、
私は、こう書きました(論文PDF版:鈴木ほか 2008, p.65)。

 「このまま誰も本当の意味で当事者の意見に耳を貸さずに、事業だけが進め
 られてしまえば、港湾架橋事業は未来に向けて大きな禍根を残すことにも
 繋がりかねない。賛成・反対の別を問わず、当事者の声に耳を傾ける謙虚さ
 をもつことは、科学が正気であるために、いま最も必要不可欠な手続きの
 ひとつではないだろうか」
 
 
自治体側は当時、国交省の埋立て免許申請を既に終え、それが降り次第、架橋
事業を粛々と始める段階にありました。事業を強行すれば、強行した手続きの
あり方そのものが、大きな爪痕となって残るだろう、との思いがありました。
しかし、あの論文を公表した当時は、まさかその後知事が交代し、ここまで
大きな方針転換がなされるとは、正直予想だにしていませんでした。
湯崎知事が「禍根を残さないような解決」という表現を使われ、住民協議会の
構想を掲げられたとき、ただその英断に大層驚き、また感服したものでした。
今回の報告書を受け、知事がどのような解答を出されるのかは分かりませんし、
架橋事業をめぐっての溝は、最後まで埋まらなかった、と聞き及んでいます。
しかし、最後の住民協議会の記者会見後、双方の出席者が談笑している光景は、
紛れもなく、この協議会の成果を体現していたのではないでしょうか。

知事の想いを最大限に受け止め、難しい局面を数々乗り越えて、本日報告書を
まとめられた両先生、多忙な中にも、困難な役割を最後まで放棄することなく
担われた住民の皆さま方のご尽力に、改めて最大限の讃辞をお送りいたします。
皆さま、まことにお疲れさまでした。

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最後の住民協議会が無事、終了しました。


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鞆の浦の住民協議会が、29日の19回目で実質的に終了しました。
色々と気になることもあったのですが、大きな混乱もなく終わった
ようで、とても安心しました。
関係者の皆様の注がれた多大なお時間と情熱とご苦労に、心より敬服します。
アドバイザーのご依頼を頂いて二年弱、間もなく私もお役ご免。
事前協議のため、はくたかにも随分と乗りました。
大雪で足留めを喰らったりしたのも、今となってはいい想い出です。

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鞆架橋の是非判断へ 住民協最終会合
▽知事「できるだけ早く」

 福山市鞆町の鞆港埋め立て・架橋計画で、推進、反対両派の住民による
鞆地区地域振興住民協議会の最終会合が29日、市鞆支所であった。
出席した湯崎英彦広島県知事は「生活改善などのニーズは共通している」と
総括し、市と協議の上で架橋計画の是非を判断する意向をあらためて示した。

 両派とも6人ずつ出席した。協議を仲介する弁護士2人は、交通混雑を
解消するバイパス道路の必要性への理解が一定程度進んだ▽景観への
配慮も必要▽駐車場の確保・下水道整備も必要―などの8項目を意見の
共通点とした。湯崎知事は「ニーズは交わってきたが、どう実現するかは
紙一重の差で交わらず行政の進め方が悪かったと思う」と話した。

 協議会は2010年5月に始まり、1年8カ月で計19回開いた。
湯崎知事は会合後の記者会見で「住民同士に残る禍根は少なくなった。
できるだけ早く判断したい」と述べた。

 バイパスの工法案をめぐり、県は技術的に比較する材料として5案を示した。
2案は鞆港の一部を埋め立て架橋する現行計画と海底トンネル案。残り3案
は町中心部を迂回(うかい)する山側のトンネルで出入り口の位置が異なる。
 協議会では、架橋計画の是非をめぐる両派の主張は平行線をたどった。推
進派で鞆町内会連絡協議会の大浜憲司会長は「立場の溝が埋まったとは思
わない」と指摘。反対派でNPO法人鞆まちづくり工房の松居秀子代表は
「観光資源をつぶしてまで橋を架けるべきではない」と話した。

 協議会への湯崎知事の出席は初会合以来、この日で2回目。住民の求めで
初めて公開した。(武内宏介)

{中国新聞2012.01.30: http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201201300073.html}
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住民協議会の妨げになってはいけないとの思いから、この間、2009年に実施
した住民意識調査の結果も概要を公表したきり、ずっと塩漬けにして参りました。
国のお金で研究させていただいたのに、慚愧に堪えません。
今年はできるだけ早く、それらをまとめて公表しなければと思っています。

このところ久しく海外の雑誌にものを書いていないので、
今度は真面目に、ガチンコの査読誌を目指そうかなと考えているところです。

また3月には、以前GIS学会講演論文集に投稿した小論を加筆修正した原稿が、
書籍の一部として公表されます(古今書院刊「役に立つ地理学」)。今年も
鞆の浦の問題に関しては、私なりにできることをしていこうと思っております。
上記の本に関しましては詳細が決まり次第、追ってご案内させていただきます。
ご興味がおありの方は、著者割が利きますので、ご連絡下さい。


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鞆の浦で住民説明会が開催されました


Category: 鞆の浦関連   Tags: ---
一年以上に渡って続けられてきた鞆の住民協議会が一つの区切りを迎え
住民説明会が行われました。報道では約400人の方が来場されたそうです。
一部で逮捕者が出るなど残念なこともありましたが、大きな混乱もなく無事
会を終えることができたようですね。

※鞆の浦架橋計画で住民説明会
  LINK→ NNNニュース動画(1/9 19:13 広島テレビ)
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鞆の浦架橋計画で住民説明会
 福山市の鞆の浦に橋をかける計画をめぐり、住民の間で続けられてきた
協議の内容を広く知らせて意見を求める「住民説明会」が、9日、開かれ、
出席者からは架橋計画に賛成の意見が多く出されました。
 鞆の浦の架橋計画をめぐっては、県の主催で賛成、反対双方の住民12
人が参加する「住民協議会」が開かれ、去年5月から18回にわたって話し
合いを続けてきました。
 9日は協議会の内容を知らせる「住民説明会」が開かれ、鞆小学校の
体育館におよそ400人が集まりました。
 説明会では、協議の仲介役を務める弁護士が双方の立場の意見を紹介し、
続いて県の担当者が、橋を架ける方法に加えて山側や海底にトンネルを
通す方法を県として示したと説明しました。
 これを受けて住民から意見が出され、「計画が持ち上がってから20年
以上協議して一度は県が橋を架けることを決めたというこれまでの経過が
無視されている」とか、「トンネルは街中をう回するので地域活性化に
つながらない」などと架橋計画に賛成の意見が多く出されました。
 一方で「癒やしを求めにくる観光客も多いので今の景観を守るべきだ」
などという反対意見も出され、説明会は予定を大きく上回る4時間近くに
及びました。
 県は近く、この説明会を踏まえて「住民協議会」を開き、意見をとりまとめ、
湯崎知事が計画への判断を示す見通しで、架橋問題は大詰めを迎えて
います(01月09日 21時43分)。
※出典:NHKウェブサイト
 (http://www.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/4004894821.html)
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住民協議会に対し厳しい意見もあったようですが、30年近くに渡って公共
事業を推進してきた県側がここにきて住民の声に耳を傾ける姿勢へと転換
したのは、とても良いことではないでしょうか。もし、事業を強行していたら、
それこそ住民の間に禍根を残す結果になったことでしょう。

18回に及ぶ対話を続けてこられた協議会の方々の努力に深く敬意を表し
たいと思います。
また、この困難な課題をお引き受けになり、時に憎まれ役になられてまで、
住民間の対話を仲介してこられた牛島、大澤両先生のご尽力に、改めて
頭の下がる思いがいたしました。
 皆様、まことにお疲れさまでした。

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