活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

「人文知のカレイドスコープ」が刊行されました。


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
昨年の6月から、私の所属する富山大学人文学部で、連続講座『人文知コレギウム』が開催されてきたことは以前ご紹介しました。私も、その初回でダークツーリズムの視角から富山をみるとどうなるかといった話題提供をさせて頂きましたが、このほどその一年目で話題提供をした有志の原稿を集成したものが『人文知のカレイドスコープ 富山大学人文学部叢書1』として、桂書房から刊行されましたのでご紹介します。

人文知の万華鏡

この書籍には、上記の内容をまとめた「ダーク・ツーリズムの視角からみた観光地富山の可能性」(pp. 12-21)と題する小論を寄稿させていただきました。ただ、当然ながら書籍は白黒印刷ですので、図版の中にはちょっと見にくいものもあります。特に、神通川の河道と汚染分布の広がりを標高分布図にして示した図1は、白黒だと分かりにくいかも知れません。ということで、ブログにこれをカラーで彩色したものを貼っておくことにしました。カラーだと、神通川流域の標高分布が川を中心に扇状になっているようすがはっきり分かります。ついでに言えば、暴れ川で名高い東隣の成願寺川は、扇状地もより巨大であることが分かりますね。西隣に見える筋状のものは井田川の川筋です。

図1彩色版

この図は、国土地理院のDEMデータに川筋と鉄道線、道路といくつかのランドマークを貼っているだけですので、営利目的以外の方は勝手に使い回して下さって構いません(クリエイティブコモンズと称するほどクリエイティブな図でもないですが、そういう著作物と考えて頂ければ結構です)。ちなみに本文にも書いてあるとおり、図中の「強汚染地区」分布は寺西・西条先生の論文(寺西秀豊・西条旨子2013. タイのカドミウム汚染とイタイイタイ病. 社会医学研究30(2): 55-62)に掲載されている原図からトレースしたものです。ただし、当然ながら複製からおおよその輪郭をトレースしているだけですので、過度な正確性は期待しないようにお願いします。こういう図を公開することが描写対象地区にスティグマを刻することになるのではないかという議論は当然あり得ますが、同様の図は他の媒体で数多く公開されており、これ自体特段珍しい資料ではないことは申し述べておきたいと思います。

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テーマ : 生涯教育    ジャンル : 学校・教育

GISTAM 2018に参加しました。


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
先にも触れましたが、3月17日から19日にかけて、ポルトガル領マデイラ諸島のサンタクルスという小さな港町で開催されているGISTAM2018という国際会議に参加しています。

gistam

2013年の国際地理学会IGUの分科会CSRSでの発表は開催地が日本でしたし、ほかのいくつかの国際会議も韓国などの隣国でしたので、私にとって今回の国際会議は、2004年にドイツで開催された国際会議以来の、完全アウェー&ガチ査読付きの国際会議になりました。思えば2004年の私は博士課程を修了したばかり。空間認知の狭い世界しか知らず、先の見通しもなく、全てが五里霧中でした。恩師のご厚意で旅費を助成してもらって、単身ドイツへ乗り込んだのを懐かしく思い出します。それから10余年、こうして研究の世界で禄を食むことを許され、かつての空間認知とは全く違う分野に挑戦して独力で査読を通し、遥か12,000km 彼方のマデイラまで。しかし、その旅費はあの時と同じく恩師からの(但し今回は科研費分担者としての)助成。全てが不思議な巡り合わせで、私にとってはとても感慨深い出張となりました。

高校までは偏差値50もなかったぼんくらの私にとって、国際会議への参加は聴覚・言語障碍者の気持ちを痛いほど味わうことができ、人に優しい心を改めて涵養するいい機会です。今回はどういうわけかSpatial Analysis and Integrationとかいうセッションの座長も拝命し、畑違いの発表4本を仕切るという拷問もあって精神的にも久々に疲弊しましたが、自分のプレゼンではあたふた英語にもかかわらず質問をたくさん頂戴し、どうにかこうにか大意くらいは聴衆にも理解していただけたのではないでしょうか。これで投稿原稿も公開可能になりましたので、以下に公開します。

Suzuki, K. 2018. A Newly Emerging Ethical Problem in PGIS - Ubiquitous Atoque Absconditus and Casual Offenders for Pleasure. Proceedings of GISTAM 4: 22-27.

内容は、ここ数年間にわたって、色々なところで恥と汗をかきながら少しずつその精度を高めてきた地理情報倫理の構築に関する提言です。改めてそのおおもとを辿ってみますと、2011年にたまたま観光研究学会の研究グループで吉永さんや駒木さんを富山にお招きして研究会を開催した同年の冬にまで遡ります。このとき愛知大の駒木さんがフードデザートの話題提供をしてくださいましたが、そのときふと、ラスタデータで異なる値の境界線上に位置している対象者をどちらに分類するかをめぐって倫理的課題がないだろうかという疑問が湧いてきたのが発端でした。

「GIS使いはこういうGISの倫理的課題にどう答えているのかな?」から出発し、研究会をご一緒した江戸川大学の吉永さんを通じて倫理学会に顔を出させていただいて、情報倫理の研究者に疑問をぶつけたのが、2012年の日本倫理学会第63回大会のワークショップ『デジタル・マッピングの倫理-地理学と倫理学の観点から』。このときコメンテーターをなさっていた神崎先生(南山大学)からいろいろと教えていただきながら問題意識をさらに洗練させ、2014年には京都生命倫理研究会からのお招きで「ユビキタス・マッピング時代のプライバシー問題」と題しての話題提供。このときいただいたご示唆をもとに、「遍在する、隠れた神としての電子地理情報技術-地理情報科学における倫理的課題について」を発表したのが2014年秋の日本地理学会でした。翌年始めには、そこまでの議論を通じてまとまってきた問題意識をもとに「Web 2.0時代の地理学と『電子地理情報倫理』」(地理 60-1, pp. 48-51)を寄稿。アジ文っぽい書き方になってしまったものの、実質的にはこれが今回の論考の原型だったかも知れません。

ほどなく、地理学会での発表がご縁になって若林科研の『GISと社会』に加えていただき、昨年の『参加型GISの理論と応用』でのチャプター執筆、北陸G空間Expoの基調講演の機会をいただくところまで、構想からおよそ6年。駒木さんとの雑談から始まった研究課題が、6年の時を経てわらしべ長者のように膨らみ、ついには国際デビューまですることになるのですから、研究とは本当に人のご縁で成り立っているのだなと改めて痛感するばかりです。これまで学んできたことのほぼ全てを、この小論に注ぎ込んであります。査読者にAmazingと言われる経験なんて今後の人生でもないと思いますが、それだけ長い期間にわたって、多くの先生からのご示唆(と旅費)をいただいて、大きく育てられたのがこのテーマでした。ブラッシュアップに関わってくださったすべての先生方に、改めて感謝申し上げます。


テーマ : 海外旅行    ジャンル : 旅行

参加型GISに関する書籍が出版されました


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
PPGISこのところ関わらせていただいていた日本地理学会の研究グループ「GISと社会」のコアメンバーの先生方が中心となって編著された、日本で初めてのPPGISの概説書がいよいよこの3月25日、刊行されることになりました。恐らくは日本地理学会が最初のお披露目になるはずです。

若林芳樹・今井 修・瀬戸寿一・西村雄一郎 2017.「参加型GISの理論と応用:みんなで作り・使う地理空間情報」東京:古今書院.

GISが一般に普及してより四半世紀、自治体や企業はもちろんのこと、皆さんのほとんどが我知らずPPGISに関わるデバイスやツールのお世話になって生活しています。誰もが携帯端末を使って自由に地理空間情報にアクセスし、自らも情報発信をする事態は、これまでの人類史上かつてない画期的なできごとで、その全体像を俯瞰したテキストは待望のものだといえるのではないでしょうか。

本書は、こうした参加型GISの大きな潮流に恐らく地理学が日本で初めて反応した先駆的な仕事のひとつだと思うのですが、たまたま折に触れて地理空間情報の倫理について関心を向けてきたご縁から、私のような三下にまで発言機会をくださったことに大変感謝しております。せっかくこういうテーマにめぐり合い、情報倫理の先生方から多くの貴重な示唆をいただきながら、右顧左眄のまま成果をまとめられず今日まで来た私も、この本の一章で「地理空間情報の倫理」(pp. 44-50)についてようやくまとまった量を書く機会を得られ、ある意味本懐を遂げた心地がしています。

地理空間情報の倫理に関しては、申請中のとある研究助成が2件ほどあるのですが、そのうちの何れかがもし採択された暁には、これも御縁と観念し、次の何年かを地理空間情報の倫理に捧げ、腰を据えて勉強したいと思います。


テーマ : コンピュータ関連    ジャンル : コンピュータ

地域生活学研究の特集号「再生可能エネルギーと景観」の緒言を公開しました。


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
縁あって編集委員長を務めさせていただいております「地域生活学研究」誌では昨年、山梨県北杜市で急増した太陽光パネルをめぐる景観紛争に関する特集号「再生可能エネルギーの施設立地がもたらす景観紛争」を企画し、関係者を招いた議論の場を設けました。北杜市の景観紛争はつい先日、2016年12月12日付の全国ネット「とくダネ!」でもとりあげられるなど、今や全国区の知名度となった感がありますが、恐らく学術誌としては、日本で最初にこの問題をとりあげたと自負しております。

さて、そうしたメディア報道を横目に、この一年間準備を進めてまいりましたのが、上記の特集を受けた第二の特集号でして。これは、関連分野の有識者をお招きして上記の特集号をご一読いただき、その上でこの問題が各々の専門分野からどう考えられるか、どういう提言が可能かを自由に議論していただくというものです。交渉の結果、10名を超える方々から快く寄稿をお引き受けいただき、昨年末までに特集号の公開準備が整いました。現在、このアップロード作業を進めておりますが、とりあえず先に、私の書いた緒言のみ公開しておこうということで、書いたものが以下の原稿です。

鈴木晃志郎2016. 緒言:特集「再生可能エネルギーと景観」の刊行に寄せて. 地域生活学研究 7: 39-41.

・・勿体をつけておいて大変申し訳ないのですが、実はこの特集号、水面下で動いている別のプロジェクトの都合上、当面全文公開ができません。申し訳ないながら、要旨のみの公開とさせていただきますことを、あらかじめお断りしてお詫び申し上げます。

テーマ : 雑学・情報    ジャンル : 学問・文化・芸術

日本観光研究学会に参加させていただきます


Category: 論文書いたよ   Tags: ---
ここ二三年、参加を見送っていた日本観光研究学会の全国大会(於・江戸川大学)へ、参加することにしました。
ダーク・ツーリズムでお馴染みの畏友・井出先生(追手門学院大)が昨年度、研究グループの助成金を同学会からいただくことになり、そこに混ぜていただいた関係で、私もダーク・ツーリズムに関する小論を寄稿させていただくことになりました。その過程で観光学におけるアカデミズムについて考えさせられることが多々あり、今回の大会を一つの区切りとすることにしました。
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01. 井出明・鈴木晃志郎・深見聡・須藤廣 2016. 近代化産業遺産とダークツーリズム―産業社会の光と影を考える―. 日本観光研究学会全国大会研究発表論文集31: 353-356.

02. 鈴木晃志郎 2016. 記憶の修辞法としての復興ツーリズム. 日本観光研究学会全国大会研究発表論文集31: 357-360.

私の恩師は、研究に対しては一切の妥協を許さない方でした。知識量と洞察力において比べるべくもないとはいえ、師の姿は私の指針となって、この体内を脈々と流れています。

「復興ツーリズム」は美しい言葉です。しかしその美しさは、既存のテクニカルタームの語義を十分踏まえないまま非難し、十分吟味されていない代替語とすげ換える行為を正当化できるものではありません。空気読めよ、カタイよと言われても、一人の研究者としてこれを看過することはやはりできそうになく、国内にそんな意見もあったのだということを記録に留めることを通じて、学問の良識を機能させておきたいというのが、今回の発表の目的です。
発表に先立ち、ひと足早くCD-ROM版が送付され、手許に参りましたので、PDF版を公開しておきます。

テーマ : 研究者の生活    ジャンル : 学問・文化・芸術

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