活動報告

鈴木晃志郎(富山大学准教授)の活動報告ブログです

 

演奏会のご案内(横浜 3/28)


Category: 音楽バカ一代   Tags: ---
日ごろ趣味の話はしないようにしておりますが、実は私、年来のフランス近代音楽フェチでして、ドビュッシーやラヴェルの同時代人の書いた作品をこよなく愛好しています。趣味がご縁になって、在京中は書籍をご一緒させていただいたり、プログラムノートを二三度書かせて頂いたこともありました。富山に来てからはとんとご無沙汰になってしまったのですが、このほど昔、HNで親しくさせていただいていた方とひょんなことからご縁が復活し、彼がフランス近代音楽の普及のため、地道な活動を継続なさっていることを知りまして。深い敬意を抱いた次第です。本日は日ごろの禁を破り、きたる26日に開催予定のある演奏会をご紹介させてください。

「平井千絵 フランス近代音楽シリーズ」
日時:平成29年3月26日(日) 午後1時30分開場 午後2時開演
料金:3,000円(小学生以下2,000円)お茶とお菓子付き 全席自由(定員30名)
場所:馬車道ピアノサロン
曲目:デオダ・ド・セヴラック
・「休暇の日々から 第1集(お城とお庭で)」
・「水の精と不謹慎な牧神」
・「セルダーニャ(5つの絵画的練習曲)」
問合せ・予約: mi00-yamada@ezweb.ne.jp(みのりの眼)
後援:日本セヴラック協会



セヴラック(1872-1921)はフランス南西部オート・ガロンヌ県に生まれた作曲家で、ドビュッシーの10才年下、ラヴェルの3才年上にあたります。クラシックの好きな方の間では以前から知る人ぞ知る作曲家ではあったのですが、日本でも「左手のピアニスト」として知られる舘野泉さんの録音で徐々にポピュラーになってきつつあります。



彼の作品は上に聴ける通り、ラヴェルの流れを汲む豊かなハーモニーと、田舎の村祭りのように屈託のないメロディやリズムが同居したもので、宮廷音楽と化していたクラシック音楽がゆるやかにその呪縛を離れていく19世紀末~20世紀初頭の空気を色濃く反映しています。だいぶ録音も増えてきましたが、生演奏で聴く機会は今でもそうはないと思いますし、採算性の問題を避けて通れないコンサートにおいて全曲をセヴラックで通すというのは、余程の覚悟と見識がないと難しいのが実情です。

東京はいいですねえ。こういうプログラムが3,000円で、気軽に楽しめるのですから・・。というわけで、お近くの方はぜひ足を運んで、近代音楽に温かい目を注いでいる企画者と奏者を応援してあげてください。

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テーマ : 音楽を楽しもう!    ジャンル : 音楽

Henri Dutilleux、Jean-Michel Damaseさん逝去


Category: 音楽バカ一代   Tags: ---
日頃、趣味の話題は書かないようにしているのですが、
訃報に接し、大変ショックだったもので、弔意を表させていただきます。

敬愛する二人の作曲家がこの程、相次いで世を去りました。
一人はアンリ・デュティユー(Henri Dutilleux: 1916-2013)さん。現代音楽の
特徴でもある微分音や無調をとり込みつつも、決して譜面上の技巧に溺れること
なく、すべてをおのが音の言葉の一部に昇華することのできた、美的平衡感覚の
大変鋭い作曲家でした。

97才はご長寿であったと思いますが、少し前にも来日されており、寡作とは申せ、
なお新しい作品を発表されていたので、訃報に接し、正直あまりに唐突で驚いた
というのが実感です。



もうお一方のジャンミシェル・ダマーズ(Jean-Michel Damase: 1928-2013)
さんは、デュティユーよりもさらに新しい世代に属する作曲家でした。ピアニストと
しての技量も大変すばらしく、いくつかの録音で国際的な評価もお持ちでしたが、
作曲家としては、現代音楽隆盛の時代にありながら、敢えて擬古典的な書法に
立脚して作品を書き続けた、信念の人であったと思います。



相次いでお二人を失った今日のこの世は、また少し輝きを失って見えます。
今朝はあなたの遺された作品を聴き、時間を過ごすことにしました。

私たちはいつまでも、あなたの作品を愛し続けるでしょう。
謹んで哀悼の意を表します。沢山の音楽を、有り難うございました。

テーマ : お気に入り&好きな音楽    ジャンル : 音楽

Robert Lannoy (1915-1979) についての覚え書き


Category: 音楽バカ一代   Tags: ---
担当している人文地理学特殊講義で、ナチのホロコーストとアメリカ音楽の関わりを
論じる回がある。頽廃芸術の烙印を押されたユダヤ文化人がアメリカへ大挙亡命し、
それがジャズの発展に大きく貢献した、という話をしているのだが、話題の性格上
どうしても亡命しなかった(できなかった)ユダヤ人音楽家の話をしなければならず、
ここ数年テレジン組の作曲家の作品を収集している。

ロベール・ラノワ(Robert Lannoy)はその過程で出会った作曲家。彼のオラトリオに
非凡な才能の煌めきを感じたことに加え、今のところ和文情報がオンライン上に全く
存在せず、ぜひ国内でも認知されて欲しいと考えたため、趣味の音楽の話はしない
という日ごろの禁を破り、覚え書きを残すことにした。
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 1915年6月18日ノール・パドカレー州サンアマン生まれ。
カリヨン奏者だった父に音楽の手ほどきを受け、ヴァランシエンヌ音楽院へ進んでファルナン・ラミーに和声法、バスーン、ヴァイオリンを学ぶ。程なくパリ音楽院に進み、1939年にはローマ大賞へのエントリーを果たしていたようだ。しかしご承知の通り、直後のナチの仏侵攻(1940年5月)によってその道は断たれた。彼はその後5年に渡り、捕虜としてヨーロッパ中を転々とさせられていたらしい。
 資料不足の為はっきりとはしないものの、虜囚期に転送先の各収容所で合唱指揮、オーケストラの組織運営を担っていた記録があるので、恐らくはその楽才によって生きながらえることができたのだろう。この間に作曲したバレエ音楽『ピグマリオン』は囚人達によって初演されている。一連の活動が“沈黙のレジスタンス”として評価され、彼は戦後、亡命者や難民関係の団体から幾つかのメダルを授与された。
 復学後、再びローマ大賞に挑んだ彼は、1946年に一幕のカンタータ『愛と偶然の戯れ(Le jeu de l'amour et du hasard)』で2等賞首席(Premier Second Grand Prix)を獲得(一等賞はピエール・プチ: Pierre Petit)。これが評価されてほどなくリール音楽院の院長に就任し、パリを去った。その後は楽院内に音楽協会を設置し、付属オーケストラを創設するなど、世を去るまで彼の地で音楽文化の普及に従事。その招きを受け、ジャック・ティボーやジャン・ドワイヨンら国際的なソリストもしばしば客演したという。1979年7月、同地にて没。レジオン・ドヌール5等騎士章受勲。

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情報収集の過程で、ご子息が運営するラノワ協会の存在を知り、ご厚意で二枚の
音盤を譲っていただいたので、以下に盤評を記しておこう。

Robert LANNOY Les Prophéties
Production privée et limitée par l'Association Robert LANNOY
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Michel PIQUEMAL, Direction
Charles-Antoine DECROIX, Récitant
Orchestre de Conservatoire de Lille
Choeurs de la Métropole Lilloise
Rec: 12 octobre 2000
(Cathédrale Notre-Dame de la Treille à Lille)

 彼のオラトリオ『予言者たち』の世界初録音。非売品。
 リハーサルを収録したものらしく、切れ切れにしか全体像を俯瞰できないのは残念だが、筆致は非常に堅牢。つらつら聴き手の耳をはぐらかすような主旋律はドビュッシーの嫡流。呪術性を秘めた拍動にはストラヴィンスキーやフロラン・シュミットの影もほの見える。和声的にはデュティーユよりも保守的で、ジャン=ルイ・フロレンツのそれに酷似。旋法性の高いデリケートな和声で彩られた断片的モチーフを、幾重にも重ねて立体的に空間構成するタイプだ。一般にはジョン・ウィリアムスの純音楽版と形容した方が分かりやすいだろうか。
 仏国立リール音楽院管弦楽団、リール市立合唱団、朗誦をシャルル=アントワーヌ・ドクロワが担当している。指揮・監修はミシェル・ピクマル。ひと頃ナクソスやマルコポーロから集中的にマイナー作家の発掘録音を次々と世に出し、鮮烈な印象を残した人物だ。演奏の練度は中央のそれに遠く及ばず、集音マイクの位置が遠かったのだろう、録音のソノリティも良いとはいえない。作曲家の才気には並外れたものがあるだけに、大規模編成の作品がこれしかないのは非常に残念だ。


 目下、私の手許には本盤と後一枚、イベリア五重奏団吹き込みの小交響曲
(シンフォニエッタ)の録音(Morceaux Choisis: Iberia01)しかない。
 彼に類似した筆致をもつ作曲家といえば、フロレンツの他にも先ごろ他界した
オベール・ルムラン(Aubert Lemeland)の名前を挙げることができる。
 方や既にCDも数種類リリースされ、容易に聴くことができるルムランに比して、
パリを離れた彼の存在はまるきり認知されないままだ。大変に残念なことである。
いち地方大学のしがない教員がこのようなエントリを残したとて、事態の打開に
どれほど役に立つかは心許ない。しかし、いずれそう遠くない未来、この孤独な
備忘録が心ある音楽関係者の目に留まり、再評価の機運が高まることを願って
やまない。

テーマ : クラシック    ジャンル : 音楽

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